「稲積さん、ジムに行きましょー!」
私には、なんでも教えてくれるなっちゃんと言う師匠がいる。
なっちゃん師匠は、美味しい店や、面白い場所にアンテナを張っていて、よく私を連れて行ってくれるうら若き女性である。カメラの腕もよく、アングルや撮り方も教えてくれるのだ。
今回はランチやスイーツを食べ過ぎて太ってしまった私をジムへと誘ってる。
お断りする理由が見つからなかったのでついて行ってみた。
場所は浜脇住人の憩いの場「湯ートピア浜脇」。そう、南館長の「湯―トピア浜脇」である。
なっちゃん師匠の指示通り着替えてジムに行き、筋トレを始めた。しばらくするとご高齢の男性が近づいて来て声をかけられた。
「そげなふてー脚じから、もっとオモリをおもーせな。いっこもきかんわ」
(訳:そんな太い脚ならば、オモリをもっと重くしなければ効果がない)
「こげーこえちしまっちから、もっと運動せな」
(訳:こんなに太ってしまって。。。もっと運動しなさい!)
聞くとおじいさんは軽く80歳越え。どう見ても70代に見えるし、体は引き締まりランニングマシンでは歩くだけではなく走っていた。
私はなっちゃん師匠から「30分歩きましょう!」と言われたにも関わらず、20分でマシンから降りてしまったダメなやつである。そして、三半規管が弱いせいかマシンから降りると宇宙から帰還した宇宙飛行士並みに重力を感じると言う辛さも加わる。
ツイストマシンに逃げ込み、座ってウエストを回してると
「稲積さん、休憩したら残りの10分、歩いて帰りましょー!」
ソフトに厳しいなっちゃん師匠である。
「やっぱり稲積さん持ってますねー。どこに行っても人から声をかけられますねー!」
いや、ちょっと違う気がするけど、なっちゃん師匠。
出会った瞬間秒速で太り過ぎたことを嘆かれてしまったことは“持ってる”と言えるのか。。
「稲積さん!浜脇に美味しいアイスの店があるから食べて帰りましょー!」
師匠―――、どうしてジムに来てるのか、覚えてる?